旅するなら、投資するなら、トルコ人を知ろう ーエルドアン大統領の経済運営について

トルコ人親日家である。しかし、たまに日本人を騙してお金を巻き上げようとする人も存在する。この場合、「親日家」であることと「お金を巻き上げようとする」ことは彼らにとっては矛盾しない。ひとりの人のなかにはいろいろな都合や考え方が存在しているのである。

トルコ人は一般に合理主義な人が多い。是々非々でものを考えるのだ。

トルコに関する日本での報道は実際と違っていたりトンチンカンなものがあると私は認識している。例えば、エルドアン大統領は独裁者だという報道がある。トルコは共和国であり民主主義の国である。エルドアン大統領は多数の国民の支持を得てその職に就いているので、独裁者であるというのは当たらない。エルドアン大統領を支持しない一部のトルコ人や外国人が、自分とは考え方が違うという理由で、独裁者と呼んでいるのであろう。

なぜエルドアン大統領が国民の支持を得られているのか。それは彼の経済運営が優れているからに他ならない。彼自身なぜ国民の支持があるのかは十分に認識している。エルドアン大統領が中央銀行総裁や副総裁をコロコロ変えているのは、自分が思ったとおりの経済政策を運営していくためだろう。中銀が本当に政治と独立してもらっては困るのだ。逆にエルドアン大統領を政権から引きずり下ろしたいなら、経済に大打撃を与えることが最も効果的であろう。

下のグラフを見てほしい。エルドアン氏が公正発展党の党首としてトルコの首相になったのは2003年である。下のグラフの青線はトルコのインフレ率を表している。彼が政権に就いた頃から急激に低下しその後安定して比較的低位を保っているのがよくわかる。1990年代はインフレ率が60%から100%超だった。インフレ率が100%というのは物価が前年比で倍になるということである。この頃の生活の大変さに比べたらその後の物価の安定は素晴らしいものがある。トルコ人はそれをよく認識しているのだ。また、オレンジの線は実質GDP(物価の変動による影響を除いた経済成長率)を示している。彼が政権に就いてからは、リーマンショックのときと新型コロナの影響があった昨年の2回のみ、マイナス成長になっている。

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政権与党の公正発展党の政策によって最近のトルコがイスラム寄りになってきているという論調もある。そもそもほとんどのトルコ人イスラム教徒である。実際にイスラム的な考え方抜きにトルコを語ることはできないが、トルコ人の実利を重んじる考え方もまたイスラムと融合している。日本人はイスラム教徒とあまり接したことがないのでイスラム教徒がどういうものかわからない。トルコ人はいわゆる原理主義的なイスラム教徒とはだいぶイメージが違う。

また、トルコ共和国は世俗国家である。トルコは何度も憲法改正をしているが、世俗国家であることは改正できないため、イスラム教を国是とする国にはなれない。

トルコ人に最も嫌いな国はどこかとアンケートをとったら、ロシアは上位にくるだろう。実際、トルコ人親日的なのは日露戦争で勝利を収めたから、という話もある。日本は、トルコ人が大嫌いな大国ロシアを破った極東アジアの国である。トルコの現政権はロシアと親和的な政策をとることもある。嫌いな国とも自分たちに有利な取引をするためのお付き合いをするというのはトルコ人らしい。

トルコは陸続きの隣国が多く、領土を争ったり、国際的な商取引をしてきた長い歴史のある国である。交渉能力に関しては日本人とは比べものにならないほど優れている。

旅行でトルコに行くレベルの日本人が、定価のついていないものを交渉してフェアプライスで買うのは無理である。フェアプライスがどのくらいかわからないし、交渉能力も違うからである。交渉を試みて買ってもいい値段までまけてくれて気持ちよく取引できるなら、そこで手を打とう。向こうは「これじゃあ自分が損しちゃうよ」などど言うかもしれないが、そんなことは絶対にない。もし値がさのものを買おうと思うなら、信用できるトルコ人の友人に交渉してもらうとよいだろう。