ゴルフ場のカラス

ゴルフ場にはいろいろな動物が現れるが、カラスも来る。

 

カラスはゴルフカートにやってきてものを物色して持って行ってしまうことがあるようだ。ある日知人がコンビニでおやつにヤマザキのアップルパイを買ってカートに積んでいた。まだレジ袋が無料だった頃で、レジ袋の中に入れていた。カラスはレジ袋の中からアップルパイの袋だけ取り出し、袋の端のところをくわえて飛び去ってしまった。

 

何故カラスはアップルパイが美味しい食べ物だということを知っていたのか?アップルパイがなんだかわからない状態であれば、レジ袋やその内容物をつついて試食をして、よさそうだと思えばそれを持って行ってしまうのではないか。その後アップルパイの外観を学習すれば、工程が短縮されるかもしれない。

 

ゴルフ客は、カートにカラスがくると追い払おうとする。カートが遠いところにあるとカラスの方が早く獲物を持ち去ってしまう。「何か四角いものを持って行ったぞ」「あー、あれは僕のアップルパイですよ。やられたー!」持ち去られた知人はせっかくのおやつをカラスに取られてしまって悔しい思いをしたが、ただでは起きずにそれを話のネタにしているようだ。

 

カラスは食べ物だけを取っていくのではない。カラーボールもお気に入りらしい。ゴルフをしているとカラスがカラーボールをくわえて飛んでいくのをたまに見ることがある。以前、私は隣家に生っていた大きく熟した柿の実をカラスがくわえて飛び去るのを見たことがある。あれは甘柿なのか渋柿なのか、渋柿だったらカラスにとっても残念だろうか、などと思って見ていた。カラーボールは柿と違って食べられない。どうするのかというと、遊びに使うらしい。二羽のカラスがゴルフボールを転がしあって遊んでいるのを見た人がいる。

 

食べ物を持って行って食べてしまうというのは、鳥など動物ならやりそうな行動である。しかし、ボールを転がして遊ぶというのはカラスの知性のあらわれだろう。カラスは頭がいいとよくいわれるが、食べたり眠ったり子育てをしたりといった生命維持活動とは直結しない、遊ぶという行為もするのだ。『梁塵秘抄』の一節にある「遊びをせんとや生まれけむ 戯れせんとや生まれけん」というのはどうやら人の専売特許ではないらしい。