クオンツとか金融工学って何?確率微分方程式の話

金融工学って何?どういう勉強をするの?と聞かれた際に、まずは確率微分方程式をしっかり勉強すると答えたことがある。すると、思いもよらないリアクションがあった。「そうなんだ。僕は高校のときに確率も微分も勉強したから、確率微分方程式なんて楽勝だね。」あまりに驚いたので、とっさに何と言っていいかわからず一瞬黙ってしまった。

高校の確率と微分を勉強しただけでは確率微分方程式は到底理解できない。それらの難易度にはかなりの隔たりがある。ちなみに大学院で指導教官に確率微分方程式を理解するために事前に何を勉強すべきか尋ねたところ、大学の数学で集合論を勉強したか問われ、いちおうやりましたと答えると、それならまあ大丈夫かと言われたことがある。実際にはあまり大丈夫ではなくかなり苦労した記憶がある。

確率微分方程式は英語ではstochastic differential equationといい、微分方程式にランダムな項が付け加えられたものである。ノーベル経済学賞の対象となったブラックショールズモデルは、係数が定数の最も単純な形の確率微分方程式である。現在はもっと複雑なタイプの確率微分方程式が金融の実務で使われている。ランダムな動きが表現される確率微分方程式は値動きの激しい金融商品モデリングに都合良く使えるのだ。

ちょっと古いけれど、おすすめの本は、Steven Shreveの"Stochastic Calculus for Finance  (I and II)"である。長山いづみ先生他による日本語訳もある。ただし、書いてあることを理解しようとするとだいぶ先まで読み進めないとわからないところがある。逆にいうとよくわからないところがあってもそこであきらめずに最後まで読んだ方がよい。最後まで読んでもわからないかもしれないけれど、そのときはもう一度読もう。私も三回は読んだ。

Stochastic Calculus for Finance I - The Binomial Asset Pricing Model | Steven Shreve | Springer

Stochastic Calculus for Finance II - Continuous-Time Models | Steven Shreve | Springer

ファイナンスのための確率解析 I - 丸善出版 理工・医学・人文社会科学の専門書出版社

ファイナンスのための確率解析 Ⅱ - 丸善出版 理工・医学・人文社会科学の専門書出版社

デリバティブズの価格付けには確率微分方程式が用いられることが多いので、クオンツになりたい人は必ず勉強しなくてはいけない分野である。独学では厳しいと思うので、大学あるいは大学院で基礎から勉強することをおすすめする。