リーマンショック時のコピュラと最近の機械学習の流行

リーマンショック証券化商品のバブル崩壊から始まった。バブルが起こったのは証券化商品の価格のつけ方に革命的な方法が見いだされたからだ。

それはコピュラという統計的な関数を用いた方法である。ひとことで言うと、多変量のそれぞれの周辺分布がわかっているときに、その周辺分布にある接合関数を作用させると、全体の同時分布が得られる。そしてその接合関数のことをコピュラという。

って、全然ひとことで言ってないか(笑)。

いろいろな資産があったときにそれぞれの資産にはそれぞれの確率分布が推定できるのだが、それらを適当な関数で接合させると、全体の分布が得られる。だから多資産全体からなる証券化商品の価格付けができるというわけだ。

証券化商品が流行っていた頃、金融業界ではみんながコピュラコピュラといって浮かれていたことを思い出す。計算が比較的簡単なガウシアンコピュラが流行っていた。ガウシアンというのは正規分布のことを指す。

でもガウシアンコピュラは「裾の依存性」が表現できない。「裾の依存性」の例として、普段はそれぞれの相関が低い資産同士なのに何らかのショックがあると相関が高くなってしまうことがある。ショックがあるとみんな何でもかんでも投げ売りするから、普段相関が低かったとしても一時的に高くなってしまうのだ。

金融業界のセールスの人は、意味がよくわからなくても流行りのバズワードをしゃべる。逆に言うとそういう人が稼げたりするのだ。こういう人たちが、よくわかんないけど儲かるテクニックがあるらしいってことで、商品を作らせてガンガン売っていた。

実際に価格を計算しているのはクオンツという職種の人たちである。クオンツは数学や計算の専門家だから経済やマーケットは専門外だったりする。とりあえずガウシアンコピュラで計算してみたら売れたのであまり深く考えずにせっせと計算していた人が多い。多くは若くて従順な人たちだ。もちろんマーケットをよく見て考えていたクオンツもいた。彼らがマーケットの状況がモデルの前提条件と違うんじゃないかと言っても、欲にかられて大声で叫んでいるセールスやトレーダーよりも声が小さくて聞こえなかったんだと思う。

金融ではコピュラは使う目的があった。当時も今も重要な金融の技術である。今でも証券化商品に使われていて、当時よりは洗練された方法で計算されている。

最近の機械学習はいろんなことに使われる。目的がはっきりしないことも多い。

いろんなことに機械学習を使いたい!ビジネスを拡大したい!という人の声が大きい。その手法じゃなくて違う方法の方がいい、ということがあっても、たまたま流行っている手法で計算したことで痛い目にあっている人たちも多いらしい。実際に計算をしているデータサイエンティストはナイーブ(英語の意味で)な若者が多いから。

どこかで見たことあるな、と思っていたのだが、リーマンショック前にちょっと似てるような気がした。