PCR検査をむやみにたくさんすべきではない理由

今更ではあるがPCR検査について考えてみた。新型コロナウイルスの検査で現在広く診断に用いられているのがPCR検査である。PCR検査の精度は100%ではないといわれている。

ある集団にPCR検査をしたとすると次の4種類のタイプがある。

  • 感染者かつ陽性
  • 感染者かつ陰性(偽陰性
  • 非感染者かつ陽性(偽陽性
  • 非感染者かつ陰性

これらがどのくらいの確率であらわれるかは、次の3つの確率で決まる。

  • 検査した集団における真の感染率(以下では感染率と書く)
  • 感度(感染者のうち陽性と診断される確率)
  • 特異度(非感染者のうち陰性と診断される確率)

感度は一般に40%~70%くらいらしい。日本では70%くらい。特異度は99%以上だそうだ。

陽性と診断された人のうち、本当は感染していない人がいる可能性がある。感染者の病棟に、新型コロナじゃない別の病気の人あるいは健康な人が混じっているかもしれない。治療方法があるていど確立している病気とは治療方針も違うだろうし、患者本人への心理的負担もあるだろう。

陰性と診断された人のうち、実は感染している人がいる可能性がある。検査で陰性とでたので安心して外を出歩いている人のうち、感染者がいるかもしれない。その人が広めてしまって感染者が増えるだろう。

感染率1%、感度70%、特異度99.99%だとする。陽性とでた人のうち本当は感染していない人の割合は1.4%、陰性とでた人のうち実は感染している人の割合は0.3%である。

感染率0.1%、感度70%、特異度99.99%だとする。陽性とでた人のうち本当は感染していない人の割合は12.5%、陰性とでた人のうち実は感染している人の割合は0.03%である。

たくさん検査するということは、その集団の感染率が、あらかじめ問診やCTなどで対象を絞って検査する場合よりも低くなるということである。その場合、陽性とでたけれど本当は感染していない人の割合が高くなってしまうという問題がある。

ところで、感度、特異度ともに低いとどうなるか。

当初ほとんど感染者がいない場合、感染率0.1%、感度40%、特異度99%だとする。陽性とでた人のうち本当は感染していない人の割合は96.2%、陰性とでた人のうち実は感染している人の割合は0.06%である。

これではいくらなんでも検査の意味がないだろう。

感染者が増えてきた場合、感染率10%、感度40%、特異度99%だとする。陽性とでた人のうち本当は感染していない人の割合は18.4%、陰性とでた人のうち実は感染している人の割合は6.3%である。

日本以外の国ではこういった状況もあったかもしれない。