COCOA(新型コロナ接触確認アプリ)を使う意味はない(たとえバグがなかったとしても)

政府が導入したCOCOA(新型コロナ接触確認アプリ)については、おおむね次の二つの意見があるようだが、どちらにも私は懐疑的だ。

1.優れた技術が用いられており予防に役立つため国民皆が必ず使うべし

2.個人情報が特定される危険があるから使わないほうがいい

2についていえば、個人情報はCOCOAには記録されないから気にしなくてよい。その理由は政府の発表の通りである。

問題は1についてである。「COCOAには優れた技術が用いられているが、新型コロナウイルス感染症の予防にはほとんどつながらないため、わざわざ使うほどの意味はない」というのが私の意見である。

なぜならば、

1.COCOAが検知するのは個人が所有する「スマホ同士の距離が近いこと」のみ

2.個人が接触していたとしても「どのような状態で接触しているかはわからない」

からである。

スマホ同士が接触していても、人間同士は接触していないかもしれない。

例えば、スマホを職場に持ち込めずロッカーなどに置いておく職場があるとする。感染者に近いロッカーに置いていても出社退社時間がずれていたらスマホ同士は接触しているが人間同士は接触していない。感染者と会話をしたかどうかもわからない。

温泉やジムのシャワールームではスマホを更衣室に置く。感染者と隣のカゴを使用したとする。スマホ同士はずっと近くにいるが本人同士は離れているだろうし、感染者が知り合いではなければ着替えの際も会話をしないし、そもそも着替えの時間がずれているかもしれない。

家にスマホを置いていても、隣人や上下の階のひとが感染しているかもしれない。材質によるがブルートゥースローエナジーはしばしば壁や床を通す。しかし、感染するほどの量のウイルスが壁や床を通ることはないだろう。

感染者がマスクをしていればしていないよりも飛沫が飛びにくい。しかし、ブルートゥースローエナジーは壁も床もマスクも通してしまう。感染者がマスクをしているかどうかはCOCOAではわからないのである。

感染者と接触した状況が、向かい合って会話をしていたのか、背中合わせで黙っていたのかもわからない。

国民の6割に普及すれば流行を抑えられるという説がある。しかし、スマホ同士の距離しかわからない、接触した状況もわからないシステムが本当に感染を抑えられるという根拠は何か。

そもそも新型コロナウイルス感染症がこれほどまでに世界で恐れられているのは、感染症が新しいタイプなのでどのように感染するかわかっていないから、という理由もあったはずだ。システム設計の時点ではどのように感染するのかわからなかったのに6割普及で流行を抑えられるとなぜ言い切れるのか。

また、現状ではどのような状況で感染するかもある程度わかってきた。それを踏まえて個人が持っているスマホ同士の距離がわかるだけで感染予防になるというような大雑把な議論がまかり通っているのが不思議である。