梅雨どきの花々

梅雨どきはうっとうしいものだが、案外たくさんの花を楽しむことができる時期でもある。

代表的な梅雨どきの花といえばアジサイだろう。大きな花房があちこちで咲き誇っている。青、紫、赤、白、さまざまな色のアジサイの競演を見ることができる。学校、公園、花屋、ホームセンターなどいろいろな場所にある。うっとうしい梅雨の季節に清涼感を与えてくれる華やかなアジサイの花は人気があるのだろう。世界各国で愛されているが、原種は日本に自生するガクアジサイなのだそうだ。

初夏に街を歩くと、どこからともなくクチナシの芳香が漂う。春には沈丁花、秋には金木犀の香りがするが、今の季節はクチナシだ。クチナシの白く美しい花を見つけるとうれしくなり、つい立ち止まってはその甘い香りを楽しんでいる。実は生薬にもなり、おせち料理のきんとんを黄色く染めるなどの着色料にもなる。

近所の高いトキワヤマボウシの木に花が咲いているのを見かけた。白い花々が木いっぱいに咲いているのに惹かれて近寄っていったのは私だけではない。ミツバチの先客がたくさんいた。庭のシンボルツリーにする人もいるとか。花も赤い実も楽しめる。ヤマボウシの実も生薬になるらしい。

公園に行くとバラの花が咲いている。5月頃に日比谷公園を通りかかった際にさまざまなバラの花を見かけたが、今の時期に二番花を咲かせるバラもあるようだ。やはりバラは存在感がある。旧古河庭園はバラの名所である。二番花は6月いっぱいくらい楽しめるようだ。今の時期、東京都の都立公園(庭園)では新型コロナの影響から事前予約が必要で整理券を配っているところがある。日比谷公園は通常通り行けるが、旧古河庭園などは予約が必要で、ふらっと公園に立ち寄ることもなかなかできにくい状況ではある。

木に咲く花だけではない。今の時期に地面から可憐に咲く花もある。梅雨の季節に母校の芝生の庭にネジバナ(モジズリ)の花が咲いていたのを思い出す。小さな花の穂が天に向かってらせん状にねじれながら咲き登っている。ラン科なのだそうだ。

この時期にもいろいろな花が咲いている。梅雨どきでもあるしぶらぶら気軽に散歩しにくい時期ではあるけれど、花を愛でると心も和む。

クオンツとか金融工学って何?確率微分方程式の話

金融工学って何?どういう勉強をするの?と聞かれた際に、まずは確率微分方程式をしっかり勉強すると答えたことがある。すると、思いもよらないリアクションがあった。「そうなんだ。僕は高校のときに確率も微分も勉強したから、確率微分方程式なんて楽勝だね。」あまりに驚いたので、とっさに何と言っていいかわからず一瞬黙ってしまった。

高校の確率と微分を勉強しただけでは確率微分方程式は到底理解できない。それらの難易度にはかなりの隔たりがある。ちなみに大学院で指導教官に確率微分方程式を理解するために事前に何を勉強すべきか尋ねたところ、大学の数学で集合論を勉強したか問われ、いちおうやりましたと答えると、それならまあ大丈夫かと言われたことがある。実際にはあまり大丈夫ではなくかなり苦労した記憶がある。

確率微分方程式は英語ではstochastic differential equationといい、微分方程式にランダムな項が付け加えられたものである。ノーベル経済学賞の対象となったブラックショールズモデルは、係数が定数の最も単純な形の確率微分方程式である。現在はもっと複雑なタイプの確率微分方程式が金融の実務で使われている。ランダムな動きが表現される確率微分方程式は値動きの激しい金融商品モデリングに都合良く使えるのだ。

ちょっと古いけれど、おすすめの本は、Steven Shreveの"Stochastic Calculus for Finance  (I and II)"である。長山いづみ先生他による日本語訳もある。ただし、書いてあることを理解しようとするとだいぶ先まで読み進めないとわからないところがある。逆にいうとよくわからないところがあってもそこであきらめずに最後まで読んだ方がよい。最後まで読んでもわからないかもしれないけれど、そのときはもう一度読もう。私も三回は読んだ。

Stochastic Calculus for Finance I - The Binomial Asset Pricing Model | Steven Shreve | Springer

Stochastic Calculus for Finance II - Continuous-Time Models | Steven Shreve | Springer

ファイナンスのための確率解析 I - 丸善出版 理工・医学・人文社会科学の専門書出版社

ファイナンスのための確率解析 Ⅱ - 丸善出版 理工・医学・人文社会科学の専門書出版社

デリバティブズの価格付けには確率微分方程式が用いられることが多いので、クオンツになりたい人は必ず勉強しなくてはいけない分野である。独学では厳しいと思うので、大学あるいは大学院で基礎から勉強することをおすすめする。

オスマン帝国で生まれ育ったアルメニア系石油王グルベンキアンの美術館

最近は脱炭素が世界的に取り組むべき課題となっており、石油業界では事業の見直しや新規技術へのさらなる取り組みが行われているようだ。今回は石油王カルースト・サルキス・グルベンキアン(1869 - 1955)とグルベンキアン美術館の話を書いてみたい。

トルコに旅行したときにポルトガルに寄った。たまたまガイドブックを見てリスボンのホテルの近くだったこともありグルベンキアン美術館に行ってみることにした。グルベンキアンのことはそれまで何も知らなかった。ここを訪れることになったのは何かのご縁だったのかもしれない。

グルベンキアンはアルメニア系でオスマン帝国末期のイスタンブルに生まれ育つ。実業家であり篤志家であった。石油輸出国機構OPEC)に先んじること30年、トルコ石油(後のイラク石油)出資者間でのカルテル体制である赤線協定(1928)の提唱者としても知られる。自らも個人としては唯一5%の権益を得て、莫大な財産を手にする。そのためミスター5%と呼ばれた。彼がその業績によって名を馳せた頃、石油は効率的でクリーンな夢のエネルギーだっただろう。

彼の遺志により、芸術、科学、教育などの助成を目的としたグルベンキアン財団がポルトガルリスボンに設立された。グルベンキアン美術館は1969年にオープンした。グルベンキアンが収集した彼個人のコレクションを展示したものであり、その数は6,000点を超える。学芸員が展示品を選ぶのとは違い、個人のコレクションは純粋にその個人の好みによる。

美術館巡りを趣味とする人は多い。私は美術館に行くことはあるが、何でもありがたく鑑賞するタイプではなく好みがある。グルベンキアン美術館は私にとって美への趣味の一致度が高いような気がしてとても居心地がいい素晴らしい空間だった。エジプト、ギリシア・ローマ、メソポタミアイスラムアルメニア、極東などの芸術品が展示されている。なかでもルネ・ラリックのコレクションは有名である。グルベンキアンはラリックと個人的に親交があった。日本の印籠なども充実している。

ところで、今年バイデン米大統領第一次世界大戦中の1915年頃に起きたオスマン帝国によるアルメニア人の大量殺害を「ジェノサイド(民族大量虐殺)」と認定した。これまでの米大統領はこの件に関して慎重に言葉を選んできた。トルコ共和国では与党、野党ともにこのバイデン大統領の声明を拒絶している。

米が虐殺と認定、オスマン帝国のアルメニア人殺害 トルコ反発 | ロイター

グルベンキアンは第一次、第二次世界大戦などの戦乱の時代を生きた人である。彼の生存中には、バイデン大統領がいうところのジェノサイドの時代も含まれている。しかし、グルベンキアンのコレクションを鑑賞すると、彼自身のルーツであるアルメニアと生まれ育ったオスマン帝国、双方の美への愛を感じる。 

 英語:https://gulbenkian.pt/museu/en/

日本語:https://www.visitportugal.com/ja/content/museu-calouste-gulbenkian

 

醤油と味噌

九州の北の方に旅行に行ったことがある。ご飯は美味しいし人が親切なのが印象的だった。ちょうど空腹になったとき駅に回転寿司があったので入ってみた。新鮮でとても良かったのだが、醤油が甘くて軽くショックを受けた。関東人の私は寿司そのものが美味しかっただけに関東や関西のしょっぱい醤油で食べたかったなあとつい思ってしまった。逆に九州の人は東京に来ると甘い醤油が恋しくなるんじゃないだろうか。

私は一般に売っている濃口醤油を通常使っている。塩分控えめのものも試しに買ってみたことはあるが、普通の醤油の味の方がいい。塩分を控えたくなったら醤油そのものを控えめにすればいいんじゃないかと思ってリピートしていない。うすくち醤油はときどき使う。うすくち醤油の塩分は名前のイメージとは違ってむしろ高めらしい。

さて、味噌は白めのいわゆる信州味噌をよく使ってきた。味噌汁は味噌によって味がだいぶ変わる。気に入ったものをリピートしているがときどき違うものにチャレンジしてみる。旅行などで地方に行ったときに味噌もいろいろだと思う。東海地方出身の知人は、関東ではほとんど白めの味噌汁だけどやっぱり赤だしの味噌汁はホッとすると言っていた。

赤味噌と言えば味噌煮込みうどんである。私のお気に入りの山本屋本店は東京には出店していないので食べたくなったら名古屋に行くしかないと思っていたが、イトーヨーカドーに袋入りのものが売られていたのを見かけたので買った。やっぱり店にはかなわないけれどこれはこれでいいものだ。名古屋出身の知人に「名古屋ってご飯美味しいよね」というと怪訝な顔をされたことがある。何故?味噌煮込みうどんもひつまぶしも美味ではないか。

九州の方では味噌も甘めの麦味噌があるらしい。近所のスーパーで麦と米の合わせ味噌を見かけたので買ってみた。味噌は甘めもいいものだ。それからときどきリピートしている。広島の合わせ味噌も気に入っている。麦味噌単体のものもあったら試してみようか。

ところで味噌をおにぎり全体に塗った味噌おにぎりは私の故郷ではよく食されている。そのままでもよし、焼いてもよし。大葉ではさんでもよし。実家ではご飯が余ると味噌おにぎりにするが、テーブルに出すといつの間にかなくなっている。関西出身の知人は関東に来てから味噌おにぎりを知ったらしい。関西にはないけど美味しいよねと言っている。まだ試していない人は是非試してほしい。素朴でいいものだ。

広島カープの新型コロナ予防についてのゼロトラスト的考察

複数のスポーツメディアによると広島カープ菊池涼介が新型コロナから復帰し今日から一軍に合流するそうだ。小園も二軍調整を行っている。また故障していた會澤も二軍調整をしている。これから他の選手も調整を経て一軍に上がってくるだろう。無理せず万全の体調で戻ってきてほしい。

さて、カープでは外出や外食を控えることによってチーム内に誰も感染者を出さない前提で新型コロナ対策が行われてきたように報道されている。しかしその方法だけではいったん誰かが感染してしまうとチームに広まってしまう。だから、これからは同じチームや対戦チームのメンバーにも感染者がいるかもしれないという仮定のもとで予防対策を行うべきだろう、と前のブログ記事に書いた。

広島カープからもコロナが出てしまった - ozgunの日記

IT関係者にこの話をしたところ、ゼロトラスト・セキュリティのことを教えてくれた。この考え方はアメリカの調査会社Forrester Research社のアナリストJohn Kindervag氏によって2010年に提唱された。何も信頼できない、どこからでもどこへでも攻撃される、ということが前提のもとでセキュリティ対策を行うという考え方だ。広島カープの話でいうと、チーム内にも感染者がいる可能性のもとで予防対策を行う、ということがゼロトラスト的考え方だ。

従来の境界型(ペリメーター)セキュリティは、「鬼は外、福は内」といった考え方である。この考え方では鬼が内にはいってこないように留意すればよい。社内ネットワークは信用できるが外部のインターネットは信用できないので、内部と外部の間にセキュリティツールを設ける。広島カープの話でいうと、チームメンバーが外食や外出を制限することでチーム全員が外からウイルスを持ち込むことはないのでチーム内は安全が保たれるということか。

しかし、境界型セキュリティに限界があるのと同様に、カープにも感染者が発生してしまった。ベンチでのマスクなしの会話などチーム内では防御が不十分だったため、いったん感染者が現れると感染が拡がってしまう。外食や外出を制限することで外からの感染は完全に遮断できるという前提が崩れてしまったのである。

クラウドの利用やテレワークが新型コロナの影響で一層推進されることになり、昨今はゼロトラスト的なコンピュータセキュリティの考え方がよりクローズアップされている。

感染症対策への思いつきがコンピュータセキュリティの考え方へのアナロジーとなるというのはなかなか興味深い。ものごとを最初から考えると別なことにも応用が利く発想がでてくることがある。

東京で一番美味しい豆かん

東京で一番美味しい豆かんを出す店は、門前仲町の「いり江」だと思う。次点は飯田橋の「紀の善」。浅草の複数の有名店にも行ったことはあるが、感想は変わらない。

いり江の豆かんは豆がしっとり黒々としていて洗練されている。もともとは蒟蒻と寒天の店だったそうだからさすがに寒天も美味しい。いり江に行くとほとんど必ず豆かんを注文する。みつは白みつと黒みつを選べるが、黒みつの方が好みである。

紀の善の豆は固めでしっかりしている。いり江の豆とどちらが好きかは人それぞれだろう。ただ紀の善に行くと豆かんではなくて抹茶ババロアを頼んでしまうことが多い。ここの抹茶ババロアは秀逸だ。抹茶ババロアに生クリームとつぶあんが載っている。甘さの加減がたまらない。カロリーを忘れて注文してしまう。もともとババロアがそんなに好きなわけではなく他の店で頼むことはほぼないが、評判がいいので試してみたら当たりだったというわけだ。

さて、私は豆かんの豆が好きなのである。豆は一般的に好きだ。例えばサイゼリヤに行くと必ず「柔らか青豆の温サラダ」を頼む。私にとってサイゼリヤはこのメニューのために行くところといっても過言ではない。ハウスワインの赤ワインもいい。ワインの良さは必ずしも値段に比例しない。ここの赤ワインを超える赤ワインは美味しいといえるだろう。家でもいろいろな豆料理を作る。春には旬のグリーンピースが出回るので、グリーンピースご飯にすることがある。グリーンピースが好きな人はどちらかというと少数派かもしれないけれど。

豆かんの話に戻ろう。スーパーに売っている豆かんを見ると豆はほんの少しでほとんどが寒天だったりする。そういう豆かんは買わない。私は豆が食べたいのだ。寒天単体がそれほど好きなわけではないので、寒天なしで豆だけでもいいんじゃないかと思ったことがある。ところで、いり江には豆みつというメニューがある。みつ豆の寒天抜きである。これは豆好きの私のためのメニューかと思っていそいそと頼んでみた。ところが寒天がなく豆だけだと何となく今ひとつなのである。少し単調な感じがする。寒天があっての豆、豆があっての寒天。双方が引き立てあって、バランスのいい美味しさに仕上がっているのが豆かんなのだということを認識した。このように絶妙な組み合わせを誰が考えついたのだろう。

いり江の豆かん、紀の善の豆かんと抹茶ババロア、すべて持ち帰りできる。家でも店と変わらず美味しく食べられるので、状況によっては買って帰ることもある。

誰にでも育てられる植物とハーブ

植物を育てるのは苦手である。温度や水のケア、害虫の駆除など鉢植えを育てるのには繊細な心とスキルが要るのだろう。でも、こんな私にも育てられる植物はある。

新卒で入った会社では、食事が終わった昼休みの後半に女性たちが応接室に入って、のんびり話をしたり仮眠したりしていた。役員秘書はグリーンハンド(植物を育てるのが上手な人)で、会社に贈られてきた胡蝶蘭などの世話をしていた。花が終わっても手入れをしてまた次の花を咲かせたりもしていた。「蘭の世話って難しいっていいますよね。さすがですね」というと、さらっと「そうでもないわよ。かわいがってあげればいいだけよ」と笑っていう。「なかなか植物の世話うまくいかないんですよ。何か私にもできるものってあるんでしょうか?」というと別な先輩社員が「いいのあるわよ。今度あげるね」といってくれた。そしてもらったのがオリヅルランである。

オリヅルラン

そのときにもらったオリヅルランは今もうちにある。今年も花の季節がやってきた。小さく白い可憐な花を咲かせている。雑草のように強靱でときどき水やりをするくらい。寒くなった頃一年に一度、花が終わったあとのランナー(花茎)や茶色になった葉を処理する。これだけの世話しかしていない。本当に私でも育てられている。

パクチーコリアンダー

パクチーコリアンダー)を栽培したことがある。パクチー一年草だ。小さい苗を買ってきて鉢に植え替えて、葉が茂ってきたら取って食べる。一本残しておいてみたら違う形の葉が出てきて白くてかわいい花が咲いて実をつけた。実もスパイスとしてインド料理などで使う。葉は個性的な香りがするが、実は葉とは違った芳香がある。実の方が万人受けするだろう。ところで葉を使うのはアジアだけではない。ポルトガル料理にも使われる。パクチー嫌いな人がポルトガル料理を頼むときには気をつけたほうがいい。

カモミール

一年草ジャーマンカモミールを育てたこともある。白い花が咲いて、花をハーブティで楽しんだ。フレッシュでも乾燥でもいいが、ミルクティがおすすめ。牛乳とカモミールを弱火で鍋にかけて沸騰前に火を止める。とてもいい香りがしてリラックスできる。

カモミールにはアブラムシが付いた。見かけたら取っていたがまたでてくる。天敵のてんとう虫もやってきたが、てんとう虫にも食べきれないようだった。

ローズマリー

スーパーで買ったローズマリーを一本鉢にさしたらあっという間に増えたことがある。このときは低層階のマンションに住んでいたが、高層マンションに引っ越したときに持ってきた。しばらくしたらブルーの花がどっとたくさん咲いた。綺麗だったがその後そのローズマリーは枯れてしまった。高いところは苦手なのかな、と思ったが、しばらくしてまた思い立って、大きめの鉢に一本さしてみた。するとやはりあっという間に増えて花がどっと咲いた。高いところだからダメというわけでもないのかなと思っていたら、やはり枯れてしまった。そこで考えたのだが、たぶん大きくなりすぎて鉢が小さくなってしまったのだと思う。すぐに増えるから地植えの方が適しているのだろう。

今年もオリヅルランの可憐な花が咲いている。これからも一緒にいてくれるよね。