完全犯罪は無理

ミステリードラマをよく見るが、自分には殺人はできないなあと思う。

倫理的な問題が一番ではあるが、そもそも私には人を憎み続けて殺人を犯すまでに気持ちを増幅させることができそうにない。人を憎むのには気力がいるから、そのうち疲れてあきらめてしまうだろう。

そして、警察の捜査をかいくぐって完全犯罪を成し遂げるということはもう到底無理だろう。思っていることを顔に書いてしまうので捜査員が見抜けない嘘をつく自信もない。普段部屋に髪の毛が落ちてしまうことを考えると、現場にもやはり落としてしまうだろう。汗や血液、遺留物もどこかに残してしまうに違いない。

一週間ほど前に、台所で米が入っているビニール袋が角に当たって破れてしまい米を散乱させたことがある。これまでになかった経験だったからかなり慌てた。散らばった米は拾って一時的に別な袋に入れた。これまで米は買ってきたビニール袋のまま台所の隅に置いておいたのだが、やはり米びつが必要だと考えて購入しすべての米粒をそれに収めた、つもりだった。

入念に一粒一粒拾って片付けたのだが、その後も折に触れていろいろなところから米粒がでてくる。リビングダイニングからでてくるのは想定内であり足の裏などに張り付いて移動してしまうのかもしれないと思っていた。

しかし、今日寝室で布団を動かしたらなんと布団の下から米粒がでてきた。知らず知らずのうちに持ってきてしまうものなんだなあと驚嘆した。

殺人犯にとっても、いくら慎重かつ綿密に殺人計画を練ったところで、思いもよらぬハプニングが起こるかもしれない。落とした米だって思わぬところにまで移動するのだから、どんな証拠をどこに残してしまうか見当もつかない。

世の中にはデューク・東郷のような殺人のプロがいて、決して尻尾を出したりしないのだろうか。もしかすると私にその種の才能がなさすぎるだけなのかもしれないが、とても真似はできそうにない。