コロナで銀座がシャッター街になる危機とスマートシティの波

昨年2020年の初めまでは銀座通りの銀座7丁目、8丁目あたりに行くと観光バスから中国人がわんさか降りてきて、インバウンドが全盛だった。

バブルが崩壊してしばらく後の1990年代後半から銀座は緩やかに姿を変えてきていた。百貨店に行くとフロアに客よりも店員のほうが多いところもあった。2012年にはユニクロも進出して、伝統的な高級店だけの街ではなくなっていた。

そういう銀座にとってインバウンド客は救世主だった。 外資系の高級店も増えて活況が戻ってきていた。東急プラザ銀座は2016年開業当初からテイストが日本人好みではない感じで、化粧品売り場など明らかに免税店のスペースが広かったように思う。そのころにはインバウンド客がすでにメジャーになっていたからだ。銀座三越松屋なども、インバウンド客向けに舵をとっていた。銀座に行くと街ゆく人は、他の国の人たちもいたがほとんどが中国人のようだった。顔は同じ東洋系だが服装のセンスが微妙に違うし、大声で会話しているのですぐわかったものだ。

コロナの緊急事態宣言中にもかかわらず、政治家が銀座のクラブを訪れていたニュースがあった。クラブもなりふり構わず顧客に来てもらわないとやっていけない状況にあったのだろう。企業の接待には使ってもらえないから、政治家などのいいお客さんに来てもらってなんとかコロナの期間も食いつないでいこうと必死なのだろう。銀座のクラブは別に行かないと生活できないというような種類の業種ではない。金と権力がある人たちと企業人の社交の場であり、文壇バーのようにそこでできた文化のようなものもあろう。しかし、これからも多くの店が存在できるほど社会に必要とされる可能性は低い。

銀座の高級百貨店は今後Eコマースに取って代わられる部分が大きい。特に宝石など、実物を見たいというニーズは残るだろうが、これまでよりも余裕がなくなるのではないか。

地方都市が寂れてきたといわれてしばらく経つ。10年前に各地方に営業支援の仕事で訪れたことがあるがすでにその時点で、都市の中心地では寂れ具合が目立っておりシャッターが閉まった店がずらっと並んでいた。それらの都市の中にはやはりインバウンドで多少息を吹き返したところもあるだろうから現状はきびしいだろう。

銀座の地価に耐えられる商店がどのくらいあるのか。これからその地価も下がって行くに違いない。インバウンド客は観光目的で多少戻ってくるかもしれないが、多くの客は銀座の代わりにウェブ上のショッピングセンターに行くようになるかもしれない。そういった意味でもウェブ上にも高級ショッピングセンターができてもよい。現在の多くのアパレル、特に高級品、のサイトは重いうえにわかりにくく必ずしも快適な買い物に適さないから改善の余地は大きい。画像の美しさを最優先しているからであろうが、これからは実際に買いに来る客の利便性を重視する必要がある。服も実際に試着してみないとわからない部分があるが、オンラインでの試着もより一般的になっていくだろう。寂しいけれど銀座も地方都市の中心街のようになっていくのだろうか。

第二次世界大戦後、東京は大空襲があってほとんど更地になってしまったが、そこから大復興を遂げた。コロナをきっかけに街づくりの基本が変わってくるかもしれない。田舎だけではなくて都会にもスマートシティの大きな波が押し寄せてくるだろう。これは危機かもしれないが奇貨となりうる。